熱中症労災を起こさないための効果的な対策とは!?

この対談に登場する専門家

角井 孝次 氏

社会保険労務士。中央労働災害防止協会(中災防)非常勤講師。職長・安全衛生責任者教育講師。特別教育等講師。心理学研究家。 / 海外・国内の科学的根拠に基づくエビデンスベースドの最新の心理学を研究し講演・研修・執筆など幅広く活動する。

奥山:残暑厳しい9月、この時期は熱中症にかかりやすい時期なんです。長期休暇明けで身体が現場の暑さを忘れていることが原因なんだとか。さて、ここで気になるのが熱中症労災を起こさないための対策ですよね。角井先生、今回も解説をお願いします!

角井:はい。熱中症対策として一般的なのは「適度な休憩」「水分補給」です。しかし、現場ではそれよりも基本的かつ重要なことがあります。何か分かりますか?

奥山:「暑熱順化」でしょうか?熱中症になりにくい身体づくりは大切だと思います。

角井:それもたしかに重要ですが、企業としての答えは「現場教育の徹底」です。私は安全衛生教育の講師として企業の現場を見る機会が多いのですが、熱中症に関して言えば、職場における熱中症のリスクが現場の従業員まで上手く伝わっていないと感じる場面は少なくないです。

奥山:その原因は、どこにあるのでしょうか?

角井:企業、特に製造業のリスクアセスメントの実施は安全分野を中心にマニュ アル等が整備されています。一方で、労働衛生分野のハザードは一部しか取組み方法が整備されていない場合がほとんど。ここに、浸透への障壁があると考えています。
熱中症に関する対策は、まだまだ現場単位でのKY(危険予知)活動などで実施しているのが現状。現場管理者も手探り状態であるため部下を上手く教育できず、リスクが潜在したままになってしまうのです。

奥山:現場レベルでなく、企業として従業員に熱中症対策の指針を打ち出すべきということですね。

角井:その通りです。企業として暑熱環境の実態や対策を調査し、それらの結果も踏まえながら、熱中症対策、熱中症の基礎知識、暑熱作業に関するリスクアセスメントの実施を促進すべきだと思います。それを踏まえ、それぞれの現場において、教育も含めた対策を講じることが大変重要になるのです。

奥山:熱中症になるのは個人の要因が大きい、という意識が徐々に減っていくといいですよね。

角井:企業が熱中症(予防も含め)対策に本気で取り組んでいると行動で示せば、従業員は自分にも起こり得る問題なんだと認識できます。そうなれば、他の人に迷惑はかけられないと無理して頑張る人は減るでしょうし、従業員同士でお互いに大丈夫かな?と様子を確認し合う機会は増えるでしょう。そのような意識が浸透していけばと思います。