労災発生だけでは終わらない!労災の悪影響を考えてみる!

この対談に登場する専門家

角井 孝次 氏

社会保険労務士。中央労働災害防止協会(中災防)非常勤講師。職長・安全衛生責任者教育講師。特別教育等講師。心理学研究家。 / 海外・国内の科学的根拠に基づくエビデンスベースドの最新の心理学を研究し講演・研修・執筆など幅広く活動する。

熱中症による労災発生後、職場で起きること

奥山:熱中症予防指導士、スターライトの奥山です。今回は、社労士の先生に労働災害「熱中症」についてお話を伺います。それではさっそく、角井先生お願いします。

角井:高温多湿な環境になると体内の水分と塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻することで熱中症の危険度が高まります。仕事に追われて余裕がなかったりすると、水分補給や休憩がとれず、熱中症のリスクはさらに増します。

奥山:熱中症による労災が起こると、企業としてたくさんの問題を抱えることになりますね。

角井:そうですね。大切な従業員が傷ついたり、失ってしまうことが一番の問題ですが、それ以外にも職場の雰囲気の悪化や、企業イメージの低下なども起こり得ます。

奥山:具体的には、どのようなことが起こるのでしょうか?

角井:職場の仲間が労災で負傷した場合、その根本原因が解決されないと、不安が連鎖していきます。例えば、その職場で働くことを避けたくなり、職場の秩序の乱れや生産性の低下が起こります。その結果、離職や人材流出につながるケースも。
また、労災で職場が休業となる場合、工期や納期の遅延など取引先への信用を落とすことにも繋がります。信用という点では、かなりのイメージダウンを覚悟しなければなりません。

奥山:営業職の私にとって、信用を失うのは一番怖いことです…!

熱中症での労災で企業の法的責任が問われるケースが増加

角井:さらに、近年は労災に対して企業の法的責任を問われるケースが増えてきています。訴訟となり、もし企業側の不備が明らかになった場合は企業の存続に大きな影響を与えます。

奥山:もし、その当事者が私だったら…と思うと会社にも行きにくくなるかも…

角井:はい、一般的な職場のストレスは仕事の質・量・人間関係が原因ですが、ここに「労災が起きやすい職場で働くことへのストレス」が加わります。これは、暑く危険な場所で働くことへの精神的な緊張感が連続したり、今度は自分が労災を起こしたらどうしようというプレッシャーが原因ですね。このような状況下では、心の健康を害し(精神疾患)、休職や退職に至るケースも少なくありません。

奥山:熱中症による労災は、発生したときはもちろん、その後の二次的な問題がたくさんあることが分かりました。企業は万が一の労災発生後の真摯な姿勢を忘れてはいけませんね。