熱中症と労災をデータで見てみよう!


研究員
何度言ったらわかるんですか!所長!
熱中症の恐ろしさを感覚だけで説明しても伝わりっこありません!
定量化し「見える化」したレポートを作成しました。
熱中症労災の発生状況とは
厚生労働省 職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況
厚生労働省のデータをもとに解説します。
平成10年から24年のデータを見ると、年間約20件熱中症による死亡労災が発生していることがわかります。これは労働災害死亡者トータルの約2%にもなります。
業界別 熱中症による死亡災害
厚生労働省 職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況
建設業の熱中症
平成22年からから24年の比較的最近の業種別死亡災害発生では、建設業が41%と圧倒的。また、こちらの数値は建築業の災害死亡者の約5%にあたります。
一般的に建築現場は屋外が多く、直射日光を受けやすい環境にあります。また、建物がどんどん出来上がり目まぐるしく作業状況が変わっていく場所でもあります。
そんな場所では、十分な暑さ対策を行うことは難しいのかもしれません。
また、熱中症になりかけた状態で作業を行い、高所から転落したり、危険な機器と接触したりなどの事故も含めば、熱中症が起因している死亡災害数はもっと多いのかもしれません。
農業の熱中症
最近問題になっているのが農作業時の熱中症。
収穫作業は中腰で行うことが多く、疲労がたまりやすいです。小規模な農園では機械化が十分に進んでおらず、長時間作業を余儀なくされます。また、農業人口の60%が65歳以上、平均年齢65.8歳と高齢化が進んでいることもあり、熱中症発症のリスクが高まっています。
製造業の熱中症
意外に感じられるのが熱中症労災死亡率15%の製造業です。
金属を溶かし加工する現場や食品を手加工で生産する現場は高温多湿となり、WBGT値も高くなります。
[WBGT値について解説した記事はこちら]
また、家電や電気・電子機器生産はクリーンルームで音調コントロールがされており、熱中症は起こりにくいと考えがちですが、全身を防塵服や手袋で覆い、汗の蒸発が妨げられるため、安心はできません。
クラッときてからでは遅い!
平成24年度の死亡災害の症状の出方
- 55%:倒れ・座り込みなどのはっきりした症状が出た
- 45%:作業中のふらつきや言動に異変があった
- 5%:業務終了後
このデータより、症状が出る前に誰かが気付いてあげる、またはちょっとした異変に早く気付いてあげれば95%の死亡事故が防げた可能性があることがわかります。
ただ、広い作業現場での散らばっての作業や、高所作業または緻密で細かい作業など集中を要する作業現場ではなかなか周りへの目配りがしにくい、というのも事実です。

研究員
以上のデータから、「事前にあの人に異変に気付いてあげていられたら…」という後悔のメッセージが強く感じられました。

この反省をもとに、現場での作業前体調チェックの徹底やこめな声かけ、を心がけなければなりませんね。

そして管理者は、従業員の体調管理をデータ化するなどして、徹底的にすべきではないでしょうか。